Degasがアフリカの食糧危機と気候変動問題を同時に解決するために、10億円の資金調達を実施し脱炭素事業へ進出

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000048157.html
以下に続きます。

資金調達の背景(続)
2022年3月以降、ロシアのウクライナ侵攻に伴った肥料価格の高騰(昨年対比約3倍1。ガーナは肥料の約4割2をロシアに依存)により、既に脆弱なアフリカの農家は大きなダメージを受けました。そのため、農業というアフリカの人口の大半を占めるセクターにおいて、当社が提供する農業資材のファイナンスという根幹のサービスの需要はさらに高まりました。肥料価格の高騰に加えて、通貨危機、インフレーション、燃料・食糧価格の高騰というクアトロパンチでKO寸前で国民生活を苦しめる中、間接的に10万人の生活を担っている当社の存在意義は日に日に増してきています。
アフリカは、世界の温室効果ガス(GHG)排出量のうちわずか3.8%3を占めるに過ぎないにも関わらず、過去40年間で自然災害の発生頻度が大幅に増加(干ばつは約3倍、洪水は約10倍4)し、気候変動による悪影響を最も受けているという不公平な真実が存在します。

なかでも、2030年には世界の貧困層の9割5が集中すると言われるサブサハラアフリカにおける貧困層の約70%(=約6億人)は小規模農家として生計を立てていること、上記の気候変動による経済的影響を受けやすいことからも、当社ではガーナを中心に干ばつ耐性のある種子や高品質な農業資材の提供や、営農指導とそれらを大規模に行うことを可能とする農業バリューチェーンのDX化事業およびカーボンニュートラルな世界の実現に向けた研究開発支援事業を展開してまいりました。

しかし、ピンチはチャンス。世界の未耕作地の約60%6がアフリカに集中しており、植林や土壌などを通じ、温室効果ガスの吸収源として世界最大のポテンシャルを秘めていると言えます。また、農地あたりの生産性の向上ならびに農家の所得向上に伴い、2050年には22億人7に倍増すると見通されている人口を、巨大な消費市場として位置付けることは世界経済の持続的発展には欠かせません。

そのため、アフリカ最大規模の農家データとネットワーク、農家オペレーショナルエクセレンスを有する当社の強みを活かし、アフリカを脱炭素のメッカと捉え、アフリカ最大の二酸化炭素吸収を農地・農家・農業経由で行い、気候変動の緩和に貢献します。また、カーボンファイナンスを通じた農家の所得向上に取り組むことを宣言します。

資金用途
地球温暖化の原因となっている温室効果ガスを減らすため、各国各企業が野心的な削減目標(ネットゼロ・カーボンニュートラル)を掲げ、自社バリューチェーンにおいての二酸化炭素排出量を減らす動きは既に活発です。しかし、それでも削減困難な排出源やバリューチェーンを超えた排出分は、炭素吸収・除去をして減らしていく方法しかありません。
IPCCレポート8で、温室効果ガス排出の削減と同時に膨大な量の炭素を除去することが必要不可欠、と強調しています。
また2021年、イーロンマスク氏が、二酸化炭素回収技術コンペの賞金として1億ドル(約130億円)を寄付し、「私たちは本当に意義のあるインパクトを出したい。カーボンニュートラルではない、カーボンネガティブ9だ」とも述べています10

炭素吸収は、大気中のCO2を技術的に直接回収するDAC(Direct Air Capture)もしくは自然を吸収源として活用するNbS(Nature-based Solutions)の二択しか存在しません。

前述の通り、当社としましては、アフリカという広大な土地・農地ならびに当社で培ってきた農家・農地ネットワーク、農業手法、テクノロジーを最大限に活用できるNbSで、炭素吸収とカーボンクレジット創出を行ってまいります。

当社では、既に世界的大手食品会社や専門機関らとともに、農業を通じた炭素吸収プロジェクト(リジェネラティブ農業/環境再生型農業)をトライアルで行っています。また、農業を通じて生まれるバイオマスを原料にし、それらを熱分解させることによって生まれるバイオ炭も、炭素吸収の手法として注目されております。これにより、年間数万トン単位での炭素吸収を今後2年間で大規模に実施していく次第です。2025年以降は、数十万〜数百万トン単位でアフリカ農業経由での大量の炭素除去事業に発展させていくことを目指します。
また、バイオ炭は土壌改良剤としても利用可能なことから、投下化学肥料量の削減にも繋がります。

こうして吸収された二酸化炭素は、”カーボンクレジット”として、上記の通り自社努力では削減しきれなかった分を補う、もしくは自社バリューチェーン外での削減を行いたい企業へ販売することが可能です。

カーボンクレジットの単価は年々上昇しており、大手決済プラットフォーム企業Stripe社の気候変動責任者ナン・ランソホフ氏によると、「100億トン相当の炭素を除去しなければいけないとして(IPCCのレポートによると、パリ協定目標達成のためには2050年までに最低でも年間60億トン除去し続ける必要がある11)、そのためのクレジット単価が、10ドル/トン〜100ドル/トンだとしても、2050年までには1,000億ドル〜1兆ドル(約130兆円)程度の市場になるだろう」と述べています12

ボランタリーカーボンクレジットの世界動向予想13
需要は2030年に15倍、2050年には100倍に伸びると予想されています。

ビジネス的に伸びることは確実な市場ですが、炭素吸収を行い、カーボンクレジット創出を行うにあたっては、そのクレジットが”高品質”であることが近年求められてきています。現地でのモニタリングの必要性や、追加性(そのクレジット収入があるからこそ、そこでプロジェクトが実行されたのかどうか)、永続性、第三者認証の有無、生物多様性への影響、そして持続可能なインパクトを出せるか、などの要件を満たした高品質なカーボンクレジットのみ、ネットゼロの達成に利用することが、2022年のCOP27において国連の専門家グループにより提唱されました14
また、カーボンクレジットの標準化に向けて国際的に活動を展開するICVCM(The Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)も、高品質なカーボンクレジットの基準を示すCore Carbon Principleの策定15を進めるなど、カーボンクレジットの品質への注目はますます高まっています。

さらに、世界最大のボランタリー認証クレジットVCS(Verified Carbon Standard)の運営機関であるNPOのVerra(市場シェア70%弱)も、小規模農家や地域社会へのベネフィット、生物多様性の保全など、GHGの削減・除去以外の副次的効果を評価するフレームワークCCB16(Climate Community & Biodiversity)を開発しています。

併せて、上記含めたグローバルイニシアチブは、自社のGHG削減目標達成のためにカーボンクレジットを利用するべきではない(航空業界などの特例以外)と明確に定義しています。
ただし、自社のバリューチェーン外での排出削減(カーボンネガティブに向けた取り組み)においては、高品質なクレジット(特に途上国)の購入が認められています。

COP26で世界的な金融機関の有志連合として発足された、資産総額約150兆ドル超を有するGFANZ(グラスゴー金融同盟)も、これまでに発表したレポート17の中で、企業のネットゼロへの移行において、カーボンクレジットは排出削減目標の達成に利用されるべきでないと、上記同様に示したものの、カーボンクレジットを活用する場合には、その質も含めて開示することを求めています。さらには、カーボンクレジットは途上国の脱炭素の取り組みに対する資金調達やSDGs達成に貢献するため、高品質なカーボンクレジットを利用することの価値は高いとも強調しています。

①高品質なカーボンクレジット:このように、カーボンクレジットは途上国などの社会課題を多く抱える地域で創出されることが推奨されており、今後その単価は高くなることが予想されます。そのためアフリカでのプロジェクト数は必然的に増え、その展開ポテンシャル(≒未耕作地面積)から同大陸をカーボンクレジット創出の市場としていくのは脱炭素と社会課題解決双方の点から見ても妥当と考えます。

②オペレーション:プロジェクト組成からモニタリング、第三者認証の取得、そして炭素吸収の実行などは、地場の知見とネットワーク、人的資本と経験が必要なため、当社で培ってきたリアルの農家との繋がりは大きな強みになります。特にアフリカという、インフラレベルも低く、ITなどを駆使した効率的ツール単体で攻めることが困難な地域においては、リアルのオペレーション抜きにプロジェクトは実行不可能なため、当社の出番だと考えます。

以上の理由から、本事業は、世界でも類を見ない泥臭さを誇るアフリカ市場で、小規模農家15,000軒超をネットワーク化し、密な関係を築き上げてきたDegasだからこそ実行可能だと考えます。

代表取締役・牧浦土雅のプロフィールとコメント

2012年以降、東アフリカはじめ5ヶ国以上(ルワンダ、インドネシア、フィリピン等)に住み、オンライン教育からヘルスケアまで幅広い事業を立ち上げる。国連と共同開発した人工衛星解析サービス“Next Space”の代表も務める。第28回国家戦略特別区域諮問会議に出席し、サンドボックス特区創設を首相・関係閣僚に提言。Wedge誌『平成から令和へ 新時代に挑む30人』等に選出。秋田県・仙北市アドバイザー、東京大学空間情報科学研究センター協力研究員等を歴任。趣味は農学と観世流能楽(国立能楽堂での演能実績あり)。ガーナ在住。無類のエチオピア料理とナス好き。

世界はこの3年間で大きく変わりました。気候変動もトレンドから、金融機関・機関投資家らによる働きかけも加わり、企業、そして人類が絶対的に解決しなければならない課題へとシフト。今では脱炭素の話題を聞かない日は無いでしょう。
世界の喫緊の課題は食糧問題と気候変動です。
私がアフリカに張り始めて10年ほど経ちました。事実、食糧問題も気候変動も、最も影響を受けるのはアフリカ。これまでは「可哀想だよね」「助けないとね」。。。それで終わっていました。
しかし、昨今の脱炭素の波に乗り、アフリカを世界最大の炭素吸収の場所にすることができると本気で私は思っていますし、上記の通り、アフリカはそのポテンシャルを秘めています。

従来「アフリカで農家ファイナンスの事業をやっており、御社との提携を、、、」と国内外の団体・企業の皆さまに話すと、開口一番に言われるのが「うちはアフリカ事業やってなくて」「遠すぎて先ずはアジアかな」などというシナジーが無さすぎるが故、尤もなコメントでした。私が同じ立場でもそう言ったでしょう(分かりませんが笑)。

しかし、気候変動は地球規模で影響を及ぼすため、国境を越えた国や地域での脱炭素の取り組みが活発化してきています。
例えば、日本の企業が排出する二酸化炭素は、アメリカの企業の従業員や、ナイジェリアの地方の村の農家も地球全体で影響を間接的に受けます。炭素吸収も同じ話で、ガーナで吸収してもカナダで吸収してもその量は同じで、影響を与える地域も同じ。
だからこそ、社会課題の解決につながる地域(アフリカ)で高品質なカーボンクレジットとして購入を促していこう、そういう流れが世界では来ているのです。
これは決してバイアスがかかっている発言ではなく、ファクトフルでロジカルなトレンドです。
2021年、アフリカで創出されたカーボンクレジットを最も多く買った企業18は、アメリカのデルタ航空です。他にもトップ10には、イタリアのグッチやドイツのフォルクスワーゲン、アメリカのネットフリックス社など、国も業界も全く関係ありません。
私は昨年年始より、アメリカ西海岸から中東アブダビ、イギリスと出向き数多くのフォーチューン500企業含む経営者や業界関係者と対話を重ね、確信しました。

カーボンクレジットは、途上国に資金を社会的かつ経済合理的に流す最善の手法

ということです。
ピンチはチャンス。
カーボンクレジットを通じてアフリカに資金を流し、食糧問題はじめとした社会課題を解決し、さらに脱炭素に寄与していく。そんな循環を目指して私は頑張ります。
No Challenge, No Life!

<出典>
1. https://www.ft.com/content/4fe601c9-25e2-48e5-a668-d4fcb34d3afc
2. https://dailyguidenetwork.com/russia-replies-ghana-on-agric-claims-2/#:~:text=%E2%80%9CHere%20in%20Ghana%2C%20some%2060,by%20the%20Russian%2DUkraine%20war
3. https://cdn.cdp.net/cdp-production/cms/reports/documents/000/005/023/original/CDP_Africa_Report_2020.pdf?1583855467
4. https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/36332
5. https://blogs.worldbank.org/opendata/number-extremely-poor-people-continues-rise-sub-saharan-africa#:~:text=However%2C%20the%20number%20of%20people,live%20in%20Sub%2DSaharan%20Africa.
6. https://www.afdb.org/en/the-high-5/feed-africa
7. https://population.un.org/wpp/Publications/Files/WPP2019_Highlights.pdf
8. https://www.mckinsey.com/capabilities/sustainability/our-insights/sustainability-blog/now-the-ipcc-has-recognized-that-carbon-removals-are-critical-to-addressing-climate-change-its-time-to-act
9. カーボンネガティブ :社会・経済活動によって排出される温室効果ガスよりも、吸収・除去する温室効果ガスが多い状態のこと
10. https://www.businesswire.com/news/home/20210208005280/en/100M-XPRIZE-for-Carbon-Removal-Funded-by-Elon-Musk-to-Fight-Climate-Change
11. https://www.mckinsey.com/capabilities/sustainability/our-insights/sustainability-blog/now-the-ipcc-has-recognized-that-carbon-removals-are-critical-to-addressing-climate-change-its-time-to-act
12. https://www.mckinsey.com/capabilities/sustainability/our-insights/a-blueprint-for-scaling-voluntary-carbon-markets-to-meet-the-climate-challenge
13. https://www.mckinsey.com/capabilities/sustainability/our-insights/a-blueprint-for-scaling-voluntary-carbon-markets-to-meet-the-climate-challenge
14. https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/high-level_expert_group_n7b.pdf?_gl=1*e5r508*_ga*MjA5OTY0MjIwNi4xNjY5Mjg4ODgw*_ga_TK9BQL5X7Z*MTY2OTM4NjM4MS4xLjAuMTY2OTM4NjM4MS4wLjAuMA..
15. https://icvcm.org/the-core-carbon-principles/
16. https://verra.org/programs/ccbs/
17. https://assets.bbhub.io/company/sites/63/2022/09/Expectations-for-Real-economy-Transition-Plans-September-2022.pdf
18. https://www.energyalliance.org/wp-content/uploads/2022/11/ACMI_Roadmap_Report_Nov_2022.pdf

January 13, 2023